この章では Rundeck を使う上での基本をカバーします。まず Rundeck の GUI と CUI 両方のインターフェイスについて説明します。次にプロジェクトの準備からコマンド実行までの操作方法を説明します。そして実行制御に用いているコマンドディスパッチャについて理解を深め、最後に実行履歴の見方と利用方法を学びます。
Rundeck には 2 つの主要なインターフェイスがあります。
どちらのインターフェイスからも、リソースの閲覧・ディスパッチ(コマンドの発信)・ジョブの保存と実行が可能です。
さらに Rundeck にはサーバーのプログラムとやり取りできる WebAPI も用意されています。Rundeck API を参照して下さい。
Rundeck の使用を開始するにはまず、Rundeck サーバーの URL にアクセスします。そして Rundeck のユーザーディレクトリの設定によって定義されたアカウントでログインします。
Web インターフェイスのデフォルトのポートは 4440 です。以下の URL にアクセスして下さい。
アクセスするとログインページが表示されます。デフォルトのユーザー名とパスワードは admin/admin
ですので、それらを入力してください。
Rundeck ページのヘッダーは、"Run"(実行)・"Jobs"(ジョブ)・"History"(履歴) タブページを行き来するためのグローバルナビゲーションになっています。また、ログアウト・ユーザーのプロフィール画面・オンラインヘルプへのリンクも載っています。
Top navigation bar
Run ページは、アドホックコマンドを実行する際に使います。Run ページではあなたのプロジェクトのリソースモデルとして設定されたノードをフィルタリングした結果を表示しています。条件にマッチしたノードだけリストアップするというようにフィルタを使う事ができます。
Jobs ページでは、保存されたジョブの一覧・ジョブの作成・ジョブの実行を、権限のある人が行えます。Jobs ページでも条件にマッチしたジョブだけをリストアップすることができます。このジョブのフィルタリングはユーザープロフィールに保存することができます。そのユーザーに閲覧権限があるジョブのみが表示されます。
History ページでは、現在実行中のコマンド・過去のコマンド実行履歴を、権限のある人が閲覧できます。履歴についても、選択したパラメーターにマッチする履歴のみリストアップできます。それらのフィルタリングも保存可能です。現在のフィルタリング設定はページ右上にある RSS リンクにも設定できます。
トップのナビゲーションバーの中に、プロジェクトを選択できるプルダウンメニューがあります。もし一つしかプロジェクトが存在しない場合は、デフォルトでそれが選択されています。
"admin" グループに属するアカウントまたは "admin" 権限が付与されたアカウントでログインした場合は、右上のログイン名がある部分に、レンチのアイコンも表示されています。このページでは全てのグループ・ユーザーの閲覧やプロフィール情報の編集ができます。
ユーザー名・メールアドレス・どのグループに属しているかといった情報が表示されます。編集も可能です。
ログアウトのリンクを押すとログインセッションを終えてログアウトします。
オンラインヘルプページを開きます
"Now runnig" (実行中) という項目が Run ページと Jobs ページの上部の実行キュー内にあります。現在実行されているアドホックコマンドやジョブが、その名前や関連情報と共にリストアップされます。また誰が実行しているか表示され、出力結果へのリンクも表示されます。
Now running
過去に実行したことがあるジョブに関しては、進捗度合いがわかるバーが表示されます。
Rundeck にはディスパッチ用の Shell ツールが数多く含まれています。ジョブの定義を読み込んで実行し、発信キューとやり取りできます。これらのコマンドツール群は、グラフィカルコンソールから利用できる機能の代わりとなります。
dispatch ~ アドホックコマンドやスクリプトを実行します rd-queue ~ 実行中のジョブに対して ディスパッチャに問い合わせることができます。ジョブを中断することもできます。 rd-jobs ~ テキストファイルに定義されたジョブを読み込んでリストアップします。 run ~ Invoke the execution of a stored Job ~ 保存されているジョブを実行できます rd-project ~ 新しい Rundeck プロジェクトをセットアップします rd-setup ~ Rundeck の設定を読み込み直します。
コマンドの細かい使い方やオプションに付いては、オンラインマニュアルページを参照してください。
Rundeck のプロジェクト機能は、管理業務を遂行するためのスペースを提供します。
プロジェクトはグラフィカルコンソールまたはシェルツール "rd-project" のどちらからでもセットアップできます。
グラフィカルツールにログインした後、上部のナビゲーションバー内にプロジェクトメニューがあることに気付くでしょう。もしプロジェクトが存在しなければ、新しいプロジェクトを作るよう勧められます。
Create project prompt
プロジェクト名を入力するだけでセットアップが開始できます。その他の項目に付いては後から GUI 管理者ページにて変更できます。
プロジェクト名の入力が完了すると、Rundeck はその名前で初期化した後、"Run" ページに戻ります。
プロジェクトの作成はナビゲーションバーのプロジェクトメニューから "Create a new project..." を選択する事でいつでも行うことができます。
Create project menu
シェルツール "rd-project" でもプロジェクトの作成ができます。
Rundeck のサーバー上で "rd-project" コマンドを実行し、プロジェクト名の指定をします。ここでは例として、"examples" という名前を付けます:
rd-project -a create -p examples
コマンドの実行後、グラフィカルコンソールにてプロジェクトメニューに今作成したプロジェクトが追加されている事が分かります。
プロジェクトを作る際に同時に他の項目も追加することができます:
rd-project -a create -p examples --project.ssh-keypath=/private/ssh.key
プロジェクトのセットアッププロセスが、サーバー内でプロジェクトの設定を生成し、リソースモデルを準備します。
Run page after new project
Rundeck サーバー自身を指す 1 つのノードがリストアップされます。このノードについては赤文字の "server" という識別子が付きます。
リソースモデルとは Rundeck がコマンドをディスパッチでき、サーバーのメタデータが紐づけられているノードのことです。どの Rundeck プロジェクトもそれぞれリソースモデルを持つ事になります。
初期状態のリソースモデルは Rundeck サーバー自身の情報だけを持っており、Rundeck サーバー自身にだけローカルコマンドが実行できます。プロジェクトごとのリソースモデルは "Run" ページで見ることができます。
シェルツールからもノードリソースのリストアップができます。特定のプロジェクトを指定したい場合は -p <project>
オプションを付けます。
下記コマンドが "examples" というプロジェクトに登録されているサーバーのリストを列挙するディスパッチコマンドになります。-v
オプションを付けるとリストの情報をより詳細に表示します:
$ dispatch -p examples -v
strongbad:
hostname: strongbad
osArch: x86_64
osFamily: unix
osName: Mac OS X
osVersion: 10.6.2
tags: ''
ノードリソースは "hostname" のような標準のプロパティを持ち、プロパティは属性を通して拡張することもできます。便利なプロパティのひとつとして、"tags" プロパティがあります。ノードに付ける タグ はテキストのラベルのことで、ある環境におけるひとつの役割として使ったり、あるグループのメンバであることを示すことに使ったり等、ノードの分類に用います。一つのノードに複数の tags を付けることもできます。
上記の出力では "strongbad" というノードに現在は空の tags プロパティ tags: ''
が付いていることを示しています。
後々コマンドディスパッチを行う際にノード群をフィルタリングするためにタグを用いるため、管理するノードにどんなタグを付けるか考えるのは重要なことです。
どのプロジェクトにも project.properties という名前の設定ファイルが存在し、$RDECK_BASE/projects/project/etc/project.properties
というパスに置かれています。
この設定ファイルはリソースモデルデータへのアクセス、取り込みのための 2 つの基本的なプロパティを持っています。
project.resources.file
: リソースモデルドキュメントを読み込む際のローカルファイルパスproject.resources.url
: 外部のリソースモデルへの URL (オプション)さらに、あるリソースモデルを他のソースから取り出してくることで、ひとつのプロジェクトで複数のリソースモデルを追加することができます。リソースモデルソース を参照してください。
Rundeck のリソースモデルドキュメントフォーマットに変換すれば、様々なソースから Rundeck にリソースモデルデータを取り込むことができます。(リソースモデルドキュメントフォーマットを参照して下さい) project.resource.url
にお好みの URL リソースモデルソースをセットしてください。
ここに、先ほどの dispatch -v
コマンドの出力結果に該当する "examples" プロジェクトのための XML ドキュメントがあります:
<project>
<node name="strongbad" type="Node"
description="the Rundeck server host" tags=""
hostname="strongbad"
osArch="x86_64" osFamily="unix" osName="Mac OS X" osVersion="10.6.2"
username="alexh"
editUrl="" remoteUrl=""/>
</project>
XML のルートノードは project で、そこに "strongbad" に対する記述がひとつのノードとして書かれています。ノードの XML タグは数ある必須属性、オプション属性のうちのひとつになります。ノードを追加する際には project XML タグの内側に node XML タグを追加してください。
ホスト strongbad はタグの定義が何もされていません。ひとつまたは複数のタグが定義できます。区切りにはカンマ(,)を使います。(例. tags="tag1,tag2"
)
以下の例では "homestar" というノードが必須属性とともに記述されています:
<node name="homestar" type="Node"
hostname="192.168.1.02"
username="alexh" />
name
と type
の値がリソースモデルの中でノードを識別するために利用される一方、hostname
と username
の値は SSH コネクションに用いられます。ポート情報を加えて上書きする事も出来ます。(例. hostname="somehost:2022"
) これはデフォルトと違うポートを使って SSH を使う際に便利です。
Chef, Puppet, Nagios, Amazon EC2, RightScale または社内データベースなど、別のツール内でホストに関する情報をメンテナンスする機会があります。これらのツールは、ネットワーク内に配置されたノードの情報に関して認証を考慮しているでしょう。従って、認証ツールへのインタフェースをつくって Rundeck の URL リソースモデルソースとするのがベストです。ツールのフォーマットから Rundeck が理解可能なフォーマットへと変更するシンプルな CGI スクリプトで実現できます。
もちろん、基本的な選択肢として XML ドキュメントとして情報をメンテナンスするというのもあります、それらは Rundeck に定期的にエクスポートされるソースリポジトリに取り込まれます。もしあなたの組織のホストインフラストラクチャが頻繁に変化するなら実用的な手段になります。
Rundeck のウェブサイトで URL リソースモデルソースをチェックしてください。 自分たちのリソースモデルを作ることに興味がある場合はリソースモデルソースの外部のデータプロバイダーとの統合項目を参照してください。
Rundeck には今のところ 2 種類のリソースモデルドキュメントフォーマットが組み込まれています。
resourcexml
.resourceyaml
.リソースフォーマットプラグインにより他のフォーマットを使うことも可能です。
どのプロジェクトもリソースモデル情報のソースを複数持つことができます。そしてリソースモデルに、新しいソースとしてプラグインを使用または作ることができます。
そのソースは GUI の管理者ページから設定できます(GUI 管理者ページを参照してください)。またはプロジェクトの設定ファイルから編集することもできます(リソースモデルソースを参照してください)
Rundeck はアドホックとジョブの2つの実行モードをサポートしています。
アドホックコマンドはコマンドディスパッチャを通してあらゆるコマンドまたはシェルスクリプトを実行できます。dispatch
という名前のコマンドツールとグラフィカルコンソール両方から実行可能です。
ジョブには 1 つのコマンドまたは連続した複数のコマンドを実行させる指令を指定することができます。それは一回実行するだけも良いですし、後から使う時のために名前を付けて保存もできます。保存されたジョブは rd-queue
というシェルツールから実行を開始します、プロセス進捗の確認も可能です。
ディスパッチャの処理は様々なタイプのオプションによりコントロールされます。
"threadcount" を設定すると同時実行数をコントロールできます。また、"keepgoing" オプションが true になっていればいくつかのノードで処理に失敗しても実行を続けさせることができます。
インクルードフィルタとエクスクルードフィルタリングをフィルタリングオプションで指定することで、プロジェクトリソースモデルの中でどのノードにコマンドを実行するのか決めることができます。
フィルタリングのインクルードとエクスクルードパターンに用いられるキーワード。"Tags" キーワードはさらに、OR と AND といったブール演算子を条件の連結に使うことができます。
すべてのキーワードはコマンドラインにて include と exclude オプションを指定することにより何個でも連結できます。
グラフィカルコンソールからでも dispatch
ツールからでもリソースモデルを問い合わせる事ができます。
プロジェクトのノードリソースは Run ページに表示されます。ナビゲーションバーの中にあるプロジェクトメニューを使ってプロジェクトを選択します。そうするとデフォルトの状態でノードがフィルタリングされています。
フィルタフォームからインクルード・エクスクルードパターンを使ってノードをフィルタリングできます。フォームは "Filter" ボタンを押すと出てきます。三角形のトグルアイコンを押してフォームを表示させてください。
Resource filter link
フォームが表示されると、シンプルなインクルード表現を設定できる Include と、エクスクルード表現を作れる "Extented Filters..." リンクに分かれていることがわかります。
Resource filter form
フィルタフォームを埋めた後、"Filter" ボタンを押して新たにフィルタリングされたノードリストを生成します。"Clear" ボタンを押すとフォームがリセットされます。
インクルード・エクスクルードフィルタは次に示すキーワードごとにノードをフィルタリングすることができます:Name, Tags, Hostname, OS Name, OS Family, OS Architecture, OS Version and Type
どのキーワードでも正規表現を使うことができます。.\*
というパターンは何もマッチしません。
フィルタリングの結果 20 以上のノードがマッチする場合は、結果がページングされます。
dispatch
コマンドは -I (include) と -X (exclude) オプションを使ってどのノードをインクルード・エクスクルードするか指定できます。これらのオプションで、ひとつの値/値のリスト/正規表現を利用できます。
例
OS name が Linux であるものをリストアップ(-p
はプロジェクトの指定):
dispatch -p examples -I os-name=Linux
"web" という接頭辞が着いたものを除き、Linux のノードをリストアップ:
dispatch -p examples -I os-name=Linux -X "web.*"
"web" と "prod" というタグが着いたノードをリストアップ:
dispatch -p examples -I tags=web+prod
"web" というタグが着いたノード全てに対し、10 スレッド同時に apachectl をリスタートするコマンドを発行。エラーが起こっても続けるオプション付き:
dispatch -p examples -I tags=web -K -C 10 -- sudo apachectl restart
ディスパッチャーコマンドで利用できるオプションについて完全なリファレンスが必要な場合は、rd-options(1) マニュアルページ を参照してください。
一般的に、アドホックコマンドはシェルスクリプトやインタラクティブなターミナルにて実行されます。Rundeck ではアドホックコマンドは dispatch
コマンドとグラフィカルコンソール両方にて実行可能です。
個々のコマンドやシェルスクリプトファイルを実行するには dispatch
を使います。
dispatch
を使って UNIX uptime
コマンドを実行しシステムステータスを出力する例です:
$ dispatch -I os-family=unix -- uptime
Succeeded queueing Workflow execution: Workflow:(threadcount:1){ [command( exec: uptime)] }
Queued job ID: 7 <http://strongbad:4440/execution/follow/7>
この uptime
コマンドはキューに追加された後に実行されました。uptime
コマンドの出力は dispatch
コマンドの出力に出ている URL に載っています。(例, http://strongbed:4440/execution/follow/7)
キューに追加せず、すぐにコマンドを実行したい場合があります。--noqueue
オプションを使って実行し、コンソールの出力を追って下さい。
$ dispatch -I os-family=unix --noqueue -- uptime
[ctier@centos54 dispatch][INFO] 10:34:54 up 46 min, 2 users, load average: 0.00, 0.00, 0.00
[alexh@strongbad dispatch][INFO] 10:34 up 2 days, 18:51, 2 users, load averages: 0.55 0.80 0.75
[examples@ubuntu dispatch][INFO] 10:35:01 up 2 days, 18:40, 2 users, load average: 0.00, 0.01, 0.00
ノート "--noqueue" フラッグは、テスト実行やデバッグ実行には便利ですが、中央管理の実行キューで管理されないやり方なため、コマンド実行状況が視覚化されません。
dispatch
コマンドは、そのノードでコマンドを実行したかのようにヘッダーを付けて出力メッセージを出してくれます。ヘッダーのフォーマットにはログインユーザーとコマンドが実行されているノード情報が含まれます。
Unix whoami
コマンドを実行して、各ノードごとにディスパッチされたコマンドを実行しているユーザー ID を見てみます。
$ dispatch -I os-family=unix --noqueue -- whoami
[ctier@centos54 dispatch][INFO] ctier
[alexh@strongbad dispatch][INFO] alexh
[examples@ubuntu dispatch][INFO] examples
リソースモデルは、ディスパッチコマンドを実行するログインユーザーをノード毎に定義していることがわかります。この機能により、ノードへそれぞれ違ったロールを割り当てることが簡単にできます、つまりプロセスの管理のためにログインユーザーを使い分けることができるということです。resource-v13(5) XML または resource-v13(5) YAML のユーザネーム属性について見てみてください。
dispatch
コマンドはシェルスクリプトも実行できます。ここにちょっとだけシステム情報を生成する簡単なシェルスクリプトがあります:
#!/bin/sh
echo "info script"
echo uptime=`uptime`
echo whoami=`whoami`
echo uname=`uname -a`
-s オプションを使って "info.sh" というスクリプトファイルを指定します。
$ dispatch -I os-family=unix -s info.sh
dispatch
コマンドは "info.sh" スクリプトをコピーしてサーバーと "unix" 系ノードに置き、実行します。
Rundeck のグラフィカルコンソールでもフィルタリングしたノードリソースに対してアドホックコマンドを実行できます。コマンドプロンプトは SSH コマンドまたはディスパッチシェルツールで実行可能な様々なコマンド文字列を受け付けます。
しかしながら、どんなコマンドを打つときでも、まずディスパッチしたいノードを含んだプロジェクトの選択をする必要があります。プロジェクトメニューから希望のプロジェクトを選んでください。プロジェクトを選択すると、"Command" というラベルが付いた水平なテキストフィールドがあるのがわかると思います。これが Rundeck のアドホックコマンドプロンプトになります。
コマンドプロンプトを利用するには、テキストフィールドに実行したいアドホックコマンドを入力し、"Run" ボタンを押してください。コマンドは現在コマンドプロンプトツールバーの下にリストアップされたノード全てに対してディスパッチされます。また、コマンドプロンプトはそのコマンド実行が完了するまで利用できなくなります。コマンド実行の出力は下記のように出力されます。(出力結果を見てみてください)
Ad hoc execution output
また、"Now running" と書かれた実行中のアドホックコマンドのリストがコマンドプロンプトの上部に表示されることにも気付くでしょう。全てのコマンド実行はそこにリストアップされます。リストアップされている実行中のコマンドにはどれも開始時間・経過時間・出力結果の別ページでの表示リンクが付いています。
Now running ad hoc command
ページの一番下には、選択されたプロジェクトにおける過去 24 時間の全てのコマンドの実行履歴がある "History" という項目があります。コマンドの実行完了後、"History" 項目に新しい履歴が追加されます。黄色でハイライトされた行は、"History" 項目に追加されかつまだ実行中のものであることを表しています。
Run history
"History" 項目のコマンド実行履歴は並び替える事も可能です。"Summary" カラムは実行されたコマンド/スクリプトを表しています。"Node Failure Count" カラムはエラーが起きたノードの数を表しています。エラーが 1 つもないときは、"ok" と表示されています。"User" と "Time" カラムは、"いつ" "誰が" コマンドを実行したかを表しています。
アドホックコマンドの実行結果はコマンドプロンプトの下に表示されます。
ここではコマンドの実行結果を様々なフォーマットで見る事ができます。
ログファイルに対して Unix の tail -f
コマンドを実行しているかのような形でコマンドの実行結果を表示します。デフォルトでは 20 行表示されますが、"-" または "+" ボタンを押す事で変更できます。現在の表示行数が設定されているテキストフィールドを修正することでも変更可能です。
注釈モードでは、選択されたラベル("Annotated" を選択するとその右側に出てくるラベル)に沿った表示をします。昇順・降順にする "Top" "Bottom" や コマンドのまとまり毎に表示を区切る "Group commands" や出力結果の詳細を折りたたみ表示にする "Collapse" などです。折りたたんだものも右端の三角形または "3-exec" のように書かれたリンクを押す事で開くことができます。
コンパクトモードでは、ノード毎に表示が区切られます。デフォルトでは出力結果の詳細は折りたたまれており、右端の三角形ボタンを押す事で開きます。
コマンドの出力結果が別ページとして切り出されていると便利なときがあります。目的のひとつとして例えば、出力結果がどうなっているか知りたい人にリンクをシェアするためといったことがあります。"Now running" 項目の "output >>" リンクをクリックするとそのコマンド実行結果に関することのみが載っているページへ飛びます。
ブラウザのロケーションバーの URL にも気付くでしょう。URL を他の人にシェアすることも可能です。URL には実行 ID(EID)が入っています。
http://rundeckserver/execution/follow/{EID}
実行が完了後、コマンドはあるステータスを取ります:
このページをテキストファイルとしてダウンロードすることも可能です。"Download" というリンクを押してデスクトップに保存してください。
並列でコマンドを実行したい場合は、"-C" オプションを使い並列させたいスレッド数を指定します。Linux ホストに対して、2 スレッド平行で uptime コマンドを実行する例はこうなります:
dispatch -I os-name=Linux -C 2 -- uptime
エラーが起こったときに、構わず続けたい・リトライさせたい場合には "-K/-R" フラッグを使います。ここにホストが 4440 ポートをリッスンしていた状態であるか確認するスクリプトの例があります。4440 ポートがリッスンされていない場合にはコード 1 を取ります。
#!/bin/sh
netstat -an | grep 4440 | grep -q LISTEN
if [ "$?" != 0 ]; then
echo "not listening on 4440"
exit 1;
fi
echo listening port=4440, host=`hostname`;
強制続行フラッグが設定されていない場合、コマンドまたはスクリプトにて 0 以外の終了コードが返ってくるとディスパッチは失敗と判断され終了します。
$ dispatch -I os-family=unix -s /tmp/listening.sh --noqueue
[alexh@strongbad dispatch][INFO] Connecting to centos54:22
[alexh@strongbad dispatch][INFO] done.
[ctier@centos54 dispatch][INFO] not listening on 4440
error: Remote command failed with exit status 1
centos54 でのスクリプト実行が失敗すると直ちにディスパッチもエラー終了となっています。
もう一度コマンドを実行する際、今度は "-K" の強制続行フラッグを付けて、どのノードにおいてスクリプト実行が失敗したかを出力しつつ処理を続行させます。
$ dispatch --noqueue -K -I tags=web -s /tmp/listening.sh
[alexh@strongbad dispatch][INFO] Connecting to centos54:22
[alexh@strongbad dispatch][INFO] done.
[ctier@centos54 dispatch][INFO] not listening on 4440
[ctier@centos54 dispatch][ERROR] Failed execution for node: centos54: Remote command failed with exit status 1
[alexh@strongbad dispatch][INFO] listening port=4440, host=strongbad
[alexh@strongbad dispatch][INFO] Connecting to 172.16.167.211:22
[alexh@strongbad dispatch][INFO] done.
[examples@ubuntu dispatch][INFO] not listening on 4440
[examples@ubuntu dispatch][ERROR] Failed execution for node: ubuntu: Remote command failed with exit status 1
error: Execution failed on the following 2 nodes: [centos54, ubuntu]
error: Execute this command to retry on the failed nodes:
dispatch -K -s /tmp/listening.sh -p examples -I
name=centos54,ubuntu
デフォルトでは、dispatch
によるコマンドライン上でのコマンドまたはスクリプトの実行は Rundeck のテンポラリジョブにキューされます。dispatch
コマンドは、グラフィカルコンソールでの "その場限りの実行" と同等です。
下記のスクリプトは、それぞれの経路でポートがリッスンされているかを定期的に確認する長めの処理です。そして引数を渡しても渡さなくても実行できます。
$ cat ~/bin/checkagain.sh
#!/bin/bash
iterations=$1 secs=$2 port=$3
echo "port ${port:=4440} will be checked ${iterations:=30} times waiting ${secs:=5}s between each iteration"
i=0
while [ $i -lt ${iterations} ]; do
echo "iteration: #${i}"
netstat -an | grep $port | grep LISTEN && exit 0
echo ----
sleep ${secs}
i=$(($i+1))
done
echo "Not listening on $port after $i checks" ; exit 1
dispatch
コマンドにより、コマンド実行処理が Rundeck のキューに入り、テンポラリジョブとして管理されます。-I centsos54
の部分は "centos54" というノードのみに実行ということを意味しています。
$ dispatch -I centos54 -s ~/bin/checkagain.sh
Succeeded queueing workflow: Workflow:(threadcount:1){ [command( scriptfile: /Users/alexh/bin/checkagain.sh)] }
Queued job ID: 5 <http://strongbad:4440/execution/follow/4>
引数を渡すには "--"(ダッシュ 2 つ)の後に指定します。
$ iters=5 secs=60 port=4440
$ dispatch -I centos54 -s ~/bin/checkagain.sh -- $iters $secs $ports
"Run" ページの上部にある"Now Running"の部分から、キューに入っているアドホックコマンドや一時的なジョブまたは保存されたジョブの実行の経過を追うことができます。
シェルツール rd-queue を使う事でもコマンド実行の経過を追う事ができます。
$ rd-queue -p project
Queue: 1 items
[5] workflow: Workflow:(threadcount:1){[command( scriptfile: /Users/alexh/bin/checkagain.sh)]} <http://strongbad:4440/execution/follow/5>
実行キューに入っているジョブはどれも実行 ID というのを持っています。上記の例で言うと、キューに 1 つジョブが入っていて 5 というのが ID に当たります。
実行中のジョブは rd-queue kill
コマンドによって kill することもできます。"-e" オプションにて kill する実行 ID を指定してください。
$ rd-queue kill -e 5
rd-queue kill: success. [5] Job status: killed
Rundeck はプラグインモデルを採用しており、それによって特定のノード・プロジェクト・Rundeck 本体がリモートで(またはローカルで)コマンドやスクリプトを実行する方法をフルカスタマイズできます。
Rundeck はリモートノードとローカルの Rundeck サーバー自身へ SSH を通したコマンド実行を扱う内部プラグインをデフォルトで使っています。
プラグインのインストールは、あなたがインストールした Rundeck の libext
ディレクトリにプラグインをコピーすることで完了します。
一般的なプラグインは、特定の"サービス"のために"プロバイダ"を追加します。"サービス"はノードでのコマンド実行を担うもので "node-executor" と "file-copier" サービスがあります。 Plugins are used to add new "providers" for particular "services". The services used for command execution on nodes are the "node-executor" and "file-copier" services.
特定のプラグインを使うには、framework.properties
ファイル と project.properties
ファイルを設定するか、またはプロジェクトリソースに定義されたノードへ属性を追加します。より詳細な設定については プロバイダを使う を参照して下さい。
内部の SSH コマンド実行プラグインについては下記で説明します、プラグインについての詳細は Rundeck プラグインの章 に載っています。
デフォルトでは Rundeck はリモートのノードでコマンドを実行するために SSH を使い、リモートノードへスクリプトをコピーするのに SCP を使い、ローカルのノード(Rundeck サーバー)に対してはローカルでコマンドやスクリプト実行を行います。
SSH プラグインでは、SSH 接続を確立するために、以下のプロパティが定義されている必要があります:
hostname
:リモートノードのホスト名。デフォルトのポート以外を使う場合は "hostname:port" というフォーマットになります。デフォルトポートは 22 です。username
:接続するリモートノードのユーザー名。リモートノードでスクリプトが実行される時、まず SCP にてスクリプトがコピーされた後、そのスクリプトが実行されます。SSH 接続プロパティに加えて、SCP についてもノードで定義しておくプロパティが存在します:
file-copy-destination-dir
:実行前にスクリプトファイルが置かれるリモートノード上のディレクトリ。デフォルトでは、Windowns のノードだと C:/WINDOWS/TEMP/
その他のノードだと /tmp
になります。osFamily
:Windows のノードには "windows" と指定します。さらに、SSH と SCP 両方とも、SSH パスワード認証のために、リモートノードに公開鍵/秘密鍵の設定をしておく必要があります。
Rundeck にはテストや開発に利用するためのプラグインが 2 つデフォルトで入っています。(プリインストールプラグイン を参照)
キューに入ったアドホックコマンドの履歴だけでなく、テンポラリ・保存したジョブの実行履歴が Rundeck サーバーに保存されています。履歴データは "History" ページ内にてフィルタリングして見る事ができます。
History page
History ページはデフォルトで直近一日分のコマンド実行履歴をリストアップしています。ページには履歴一覧を増やすまたは制限するフィルタリング機能が付いています。
フィルタリング機能は、条件を指定できる項目がいくつもあります:
History filter form
フィルタ項目を埋めて "Filter" ボタンを押すと、ページはフィルタリング条件にあったイベント(履歴)を表示します。
より手軽に履歴のフィルタリングを行えるよう、フィルタリング結果はメニューに保存できます。"save this filter..."リンクをクリックしてフィルタリング設定を保存します。
どの履歴にも、実行したコマンド・ディスパッチオプション・成功失敗ステータス・出力メッセージを含んだファイルへのリンクが付いています。
Event view
ひとつでもエラーが起こったものの場合、"Node Failure Count" カラムが表示され、何台のノードが失敗したか赤味で表示されています。バーチャートは何 % が失敗だったのかを示しています。
Event view
RSS アイコンは現在のフィルタリング設定にマッチしたイベント(履歴)の一覧表示へのリンクになります。
An RSS icon provides a link to an RSS view of the events that match the current filtering criteria.
RSS link
どのページのフィルタも、現在の設定を保存する機能がついています。"save this filter..." リンクを押して名前を付けて保存します。保存されたフィルタはどれも、次回フィルタ設定を行う際にはメニューに追加されています。
あなたが Bash シェルを使っている場合、Rundeck はよい自動補完スクリプトの一つになりえます。以下の行をあなたの .bashrc
ファイルに追加してみてください:
source $RDECK_BASE/etc/bash_completion.bash
dispatch
コマンドを入力している際にタブキーを押すと、入力の続きの候補が出てきます:
$ dispatch <tab><tab>
ここまでであなたは基本的な Rundeck の操作、つまり "プロジェクトのセットアップ・プロジェクトリソースモデルへのクエリの定義・アドホックコマンドの実行・ジョブの実行と保存と履歴の閲覧" ができるようになっています。
次は Rundeck の中心となる機能であるジョブについて学んでいきます。